1歳児の姿
1 1歳児の特徴
運動機能の発達と共に歩行ができるようになります。単語が増えて表情も豊かになる。同時に自己主張をするようにもなります。
2 遊びに見られる姿
二足歩行と言葉を獲得し、道具の使用を習得し始めます。こうした力を利用して新しく広がった世界に向かっていきます。一時も目を離せない時期です。何でも自分でやってみたい、触ってみたいという意志が強くなりダメと禁止されると大人を叩いたりひっくり返ったりして怒りを表すようになります。(自我の出現)
目覚めていればじっとしていられず、身体を動かして自分以外の物を確かめ、周囲の探索が始まります。新しい刺激にひかれて、次から次へと目標が変り、落着きなく見えます。自分自身をコントロールできないので「やめなさい」と言われてもやめられず「止まりなさい」と言っても止まれずまわりを見回すこともできません。
自己中心的で友達と協調することができません。二人で遊んでいても協調するというよりは、それぞれが一人遊びをしている状態です。自分のものも人の物も自分のものといった遊びをするので、おもちゃの取り合い、相手の物でも友達が泣いても平気といったトラブルが絶えない時期に入ります。
感覚、運動、言語の発達と同時に“自立”が始まります。1歳になると大人からのしつけ、社会人となる為の社会化の第一歩が始まります。
3 自分でしようとする
スプーンで食べる、パンツをはく、手を洗うなど、それまで大人にやってもらっていたことを自分でしようとするようになります。自分でしようとする意欲を受け止め、子ども自身がやってみることを大事にしながら世話をする大人との共同活動の中で1歳児は少しずつ自分でできることを広げていきます。
自分でしようとしている時に大人が一方的にやってあげようとすると子どもは抵抗したり拒否したりします。自分の意図に反したり思い通りにならないと抵抗します。自分の意図や感情で行動するようになります。
4 大人に伝えようとする
犬や自動車を見つけた子どもの感動の大きさに大人は共感し、受け止めてあげるようにしましょう。大人と同じ場面で気持ちを伝え合うことは「わんわん」と指差す。「わんわんいたね」「大きいわんわんだね」など1歳児の物事への認識と感動の体験を確かなものにするので次の行動に気持ちを向けることにつながっていきます。
5 発達の様々な側面
1)全身運動
1歳3ヶ月頃までには歩き始め1歳半頃までに歩行が安定してきます。
1歳後半には坂や段差など少し変化のあるところでも歩けるようになります。斜面や階段をはって上り下りするなど場面に応じて姿勢を変え活動の範囲を広げます。
しゃがんで物を取ったり、物を持って歩いたり、押して歩いたりと状況によって姿勢を変えたり同じ姿勢を保持したりできるようになり、移動するにも色々なやり方を選ぶなど自由さが増していきます。
2)手指の使い方
1歳後半になるとスプーンやシャベルなどの道具が使えるようになります。1歳前半から大人が食べ物をすくってあげると、スプーンの柄を握って食べ物を口に運んだり自分でもすくって食べようとしたりします。
うまくすくえなかったり、途中でこぼすことを繰り返しながら上手になっていきます。
鉛筆やクレヨンを持ってなぐり書きし、1歳後半にはぐるぐる丸も見られるようになり、積木を積み上げる棒さしをするなどの操作も可能になります。
3)認知
認知と同時に推測したり、みたて遊びができるようになります。積木をつなげて電車にみたてたり、ごはんにすることを告げられて手を洗いに行き箱の中に物を入れて片付けて「はいったー」と達成感を表したりします。
絵本を見ながら「あったー」「いたー」と絵を指差すようにもなります。
4)言語・コミュニケ―ション
1歳になる前後に初語が出ます。1歳前半の語いの増加はゆっくりですが1歳半ころから言葉が増え2才頃には「マンマちょうだい」などの二語文が話せるようになります。
言葉だけでなく、指差しや身ぶりその他の行動を用いて自分の意図を伝えようとするようになります。人差し指を立てて「カイ(もう1回)」と言って、絵本を繰り返し読んでほしいことを伝えられるようになります。
言語理解の発達してくるに従って簡単なことであれば、大人が言うことを理解できるようになります。1歳半頃には、肯定と否定の気持ちを身振りや言葉で表すようになります。また「お散歩に行くからクツを取っていらっしゃい」と言うと、クツを取って持ってくるように大人の言葉によって行動することができるようになります。
6 しつけのポイント
子どもが自律の第一歩を踏み出す時です。まわりの雰囲気を全身で感じとり、とげとげしい雰囲気も明るい雰囲気も子どもの心に直接ひびいていき大人の言葉使いや仕草、表情もそのまま感じとっていきます。
自分のできること、できないことの区別がつかないので教えていくことが大切です。なんでも大人のまねをしたがる時期ですが、前後の事情を見込むことは無理であり、危険な場所かどうかを察知する能力も乏しいので一つ一つ教えていくことが重要です。
そして、子どもの“自分でやりたい”という意欲を育てる大切な時期でもあり、その意欲を育てながら上手にしつけたり危険を回避する方法を教えたりすることが大切です。
子どもの意欲を育てるには親が忍耐強く見守りながらやらせてほめていると意欲的な子供に育っていきます。この時期のもう一つ大切なことは規則正しい生活のリズムをつけること(食事、排泄、睡眠、着脱)「はい」「ありがとう」「ごめんなさい」の挨拶などのしつけをすることです。1歳児なりにメリハリのある生活をすることがしつけのポイントです。
■1歳児期で大切にしたいこと
1 子どもに問いかける
「~しようね」「~しようか」とこれからの行動について語りかけ答を待つことが大切です。問われることで子どもは自分の行動として遊ぶ機会が与えられるからです。
言葉や身ぶりによる返答がない場合でも子どもは大人の言葉に注目するのです。「~なの?」と子どもの要求や気持ちを言葉にして問いかけると子ども自身が自分のしたいことを考えると同時に大切にされているという気持ちが子どもに伝わります。
このように言葉で問いかけることは、言語的なコミュニケーションの発達を促すと同時に大人によって確かに受け止められているという実感につながります。
2 1歳児の子どもの言葉
1歳半過ぎ頃に「物には名前がある!」という発見をします。「これなーに?」と盛んに名前を知りたがり言葉も「パパ、カイシャ」「ワンワン、バイバイ」などのように二つの言葉をつないだ二語文を早い子では話すようになります。
しかし、テニヲハなどが抜けていて電報のような文章なので電文体と呼ばれています。この時期、大人が話す言葉は幼児の手本となるので気をつけるようにしたいものです。
時には赤ちゃん語も使い、分かりやすく短い言葉で、聞き取りやすくゆっくりしたメリハリのある調子で、表情豊かに話しかけるように心がけるとよいでしょう。子どもの言葉には必ず答えるようにしましょう。
「クック、オンモ」には「そうね、クックはいて、おんも行こうね」というように子どもがすぐまねられる程度にちょっとつけ加えてお手本になるよう答えると子どもが言葉を覚えやすいでしょう。
重要なのは大人が無意識に話している言葉が子どもの言葉を育てているということです。
3 行動を共にしながら関心を共有する
子どもと一緒に行動することで、子どもの関心を理解したり体験したりすることができる場合は多いものです。
例えば子供の指差す方へ大人も一緒に行き、子どもが伝えようとしていることを大人が行動を共にしながら理解しようとすることで関心を共有することができます。
発見した感動を共に喜び共同遊びを一緒に楽しむ機会は大人が子供と行動を共にする中から生まれてくるのです。