学童期
はじめに
学童期とは小学校に入学してから卒業するまでの6年間をいいます。小学校入学というのは子ども達にとっても親にとっても特別な意味を持っています。今までの幼稚園や保育園などで先生や親達に保護されながら様々な環境で育ってきた子ども達は、新しい生活への期待と同時に、未知の世界に対する不安や緊張の中で入学式を迎えます。
入学後最初のうちはまだ幼稚園の延長線上にいるような落ち着かない子もいますが、しばらくすると教室という場で一定の時間、みんなといっしょに授業を受け、集団生活の規律を守れるようになっていきます。このように親から離れて集団で過ごす時間が長くなり、担任の先生や友達とのかかわりが大切になっていきます。低学年と高学年とでは大きく異なり、6年間という長い小学校生活の間に子ども達は身体的にも精神的にも大きく成長していきます。
学童期の特徴
1 身体発育
学童期にはからだの大きさも機能も大きく成長しますが、個人差も大きく身体や体重が人によっては親と子ほど違う場合もあります。この時期には直線状に身長の伸びが見られます。高学年になると思春期に重なって内分泌的な変化も加わり、それに伴って様々な問題が発生してきます。身体発育の評価は標準身長、体重を基準にして行われますが、体重と身長のバランスはローレル指数や肥満度を用いて評価されます。
身体発育の評価
身長体重のバランス:
ローレル指数=体重(g)/身長(cm)3×10000 120~130が標準
肥満度(%)=(実測体重-標準体重)/標準体重×100 +15~-15が普通
2 精神運動機能の発達
幼児期に身に付けた運動能力がさらに発達し、遊びも低学年では鬼ごっこや縄跳びなど全身運動を中心に活発な動きが見られるようになります。高学年になると野球やバスケットボールといた技巧的な運動が好まれるようになり、一定のルールのもとに仲間と協力して競うような遊びが盛んになります。手先の動作では道具を使う、細かい字を書く、楽器演奏をするなど高度な技術が身につくようになり、器用さが発達します。
3 心理・社会的発達
○1情緒
知的能力や運動能力などが発達するとともに情緒面でも複雑な広がりをみるようになります。
学童期に特徴的なものは怒り、恐怖、嫉妬、愛情、喜びの表現で、友達、親、兄弟、教師などに対し様々な場面でみられます。
怒りは直接けんかや反抗的態度で積極的に表現する場合と強情をはったり、黙ってしまったり不快な顔をするといった消極的な表現があります。恐怖は幼児期のような具体的なものより想像上の問題から発生する心配や不安から起きます。競争心から出る嫉妬や周囲の人への愛情、社会的に役に立つことへの喜びなども育つようになります。
○2社会性
低学年ではまだ少人数での遊びが中心で、お互いの強い結びつきはありませんが、学年が進むにつれ仲間意識が強くなり、集団遊びを好むようになります。すると自然に集団の中にリーダーになる子どもが出現します。リーダーになる子どもは一般に身体が大きくて力がある、運動能力が優れている、勉強ができる、やさしく正義感が強い、公平な態度をとるなどみんなが頼れる特性を備えています。そのような集団の中で、協力しようとする気持ちや、また仲間や教師に認められたいという気持ち、競争心が生まれるようになります。
○3知的機能
学童期には訓練により集中力が養われ、学習によって記憶力が著しく発達します。思考の発達として具体的なものから抽象的な思考があらわれるようになります。またあるものの概念を言葉で説明する能力、推理して結論を出す能力、批判能力、解決能力、創造的思考力も発達します。
4 学童期をとりまく生活環境
1)食生活
学童期には活発な身体活動と急速な発育に充分なエネルギーを必要とします。
バランスの取れた食事、動物性蛋白質、カルシウム、ビタミンの摂取が重要です。また初経以後の女子では鉄分が必要です。近年朝食抜き、外食による緑黄色野菜の不足、油性分の過剰摂取、夜食のとりすぎなど好ましくない食習慣が問題になっています。その結果生じる肥満や反対に行き過ぎたダイエットによる不健康やせなどには適切な指導が必要です。
学童期の心理
学童期は大きく分け低学年と高学年に分けられ、低学年はまだ幼児性が強く親や家庭への依存が強い時期です。高学年になると独立心が強くなり、家庭生活も大事であるが、学校生活、友人関係が中心となります。体の発達も旺盛であるが個人的にも大きな差がみられ、また男女の差もはっきりしてきて異性に対しても意識し始めます。自律神経系が不安定で身体的発達と精神的発達がアンバランスで不安定になりやすいのも特徴です。
2)学校生活
学童期は友達を作り仲間と交わり友達や先生に認められたという時期です。グループを作って遊ぶなかで信頼関係が形成されていきますが、時に裏切られたりすると友人を信じられなくなり、ちょっとしたきっかけで不登校になる子もいます。
いじめは早期に発見して対処しなくてはなりませんが、親が先走って教師に怒鳴り込んだりすると逆効果になることもあります。まずは本人が話せる環境を作ってあげることが大切です。その上で両親がそろって教師の協力を求めて解決に臨む姿勢を示す必要があります。
いじめの兆候としては急に無口になる、お金や持ち物がなくなる、衣服が汚れている、体に傷が目立つなどがあげられますが、最近はグループに入れてもらえない、悪口を言われるなどことばや心理的嫌がらせのいじめを訴える子が多くなっています。