子育てや育児についての悩みをお聞きしています。

思春期について

思春期について

思春期の特徴

■思春期の心と身体
○1心
親や大人の言うことを聞いていた時代から脱皮して、自分なりの価値観、生き方を作ろうとする時期です。自分で考え、行動して、判断する主体性を築きあげます。それには周囲への疑問、批判、反抗が不可欠になります。言動も大人からみたら「反抗」になるが、子供の成長から言えば「自立」と考えましょう。

○2生理
体は精神的なものよりずっと早く成長します。男性は声が変わり、たくましくなり、夢精もおこります。女性は生理が始まり、胸が発達して、女らしい身体つきになります。男女とも体毛も伸びます。体だけはいつでも子供を生める体になり、お互いにはっきりと性を意識し始めます。将来の性の営みの為に、この時期に男性は女性の体と心を尊重し、労わるように、また女性には自らの生理をしっかり理解させる必要があります。

○3人間関係
成長と共に他者と自分との関係に敏感になり、人が自分のことをどう思っているか、自分は他人から見て価値ある人間かなどの不安を強く感ずるようになります。また親や社会の価値を否定して、新しい価値観の取り入れを行なったり、自己の存在価値(アイデンティティー)に迷いと不安を感じて、揺れ動く時期です。

○4環境
中、高、大学の受験態勢の中で好むと好まないに関わらず、進路を決め、将来を一応決定することを強いられ、世間の評価を意識し、同世代の人間との優劣の戦いに巻き込まれます。マスコミなど社会の無責任な若者の言動の刺激を受けるし、同世代の人間の起こす事件や、事故の影響に曝されます。学校や友人でいじめや、仲間外れにならないように気を使い、良い友人関係を得られない人は、受難の時期になります。

■思春期の子育てのこつ
○1自立・第二反抗期と言われるようにことごとく親に反発、口答え、無視するようになります。親への依存から脱却して自立しようとする時期。このような時期に自分で考え、自分で判断し、自分でやったことは自分で責任をとるという主体的な行動を取らせるようにすることが大事。それには今までのような過保護過干渉をやめて本人に何でもさせてみて見守ることが大事です。

○2反抗・単なるわがままや、生意気と考えず、ひとつの自己表現であり、自己主張として耳を傾けましょう。本当は自分でこうしたい、こうありたいという心が見えてきます。
どんな時に反抗し、どんな時は素直に応ずるかも知っておきましょう。また反抗の中には家庭内での理不尽な親の考え行動への警鐘である場合や、親の側が謙虚に反省し、改める必要のあることも出てきます。反抗が家庭改善の絶好の機会になることも実際にあります。

○3秘密・自己の自立、独立を主張すると同時に他人からの干渉にも抵抗する時期です。自分の心の縄張りに立ち入られることを特に嫌います。自分の持ち物、友達関係、本心の吐露など親には言わないもの。
それが健全に成長している証です。この時期になんでも母親が子供の情報を握っていたとしたら、母子密着、過保護、過干渉になっている可能性があり、決して良いことではありません。秘密は横目で見逃すこと。

○4しつけ・自分の部屋の掃除、洗濯物の提出、食事の手伝い、家族間の協力態勢等の生活力のしつけはしましょう。又、人づきあいを上手にする指導と他人の立場に立つ社会性のしつけもしましょう。お小遣いの管理を通して、経済的な自立と社会情勢への興味を与えることも心がけます。受験や就職、将来への心構えを作るために、自分で考え、自分で決断する、決断したことに自分で責任をもつことを自覚させるような話し合いをしましょう。

■思春期の子供の求めるもの
○1無条件の愛(ストローク)
子供は「お前はかけがえのない大事な存在だよ」と感じたいもの。誰でも無条件に愛されている証がほしい。無条件で受容し、受け入れられることで子供の基本的信頼感を作ることができ、これが生きること、人間関係の基になります。幼児期には接触で、思春期は承認で満たすことが大事です。

○2内容より言い方
(何を言うかよりどういうか)
このストロークは、言葉が1/4で、非言語的な語りかけが3/4と認識しておきましょう。表情、眼差し、態度、姿勢、語調、ムードは親の気持ちをはっきりと伝えます。何をいうかと同時にどういうかが問題。言い方ひとつで同じ言葉がまったく違って伝わってしまいます。「柔らかな表情、おだやかな眼差し」が基本。言動一致が大事で、言動不一致は子供に悪影響を与えます。

○3ストロークの効果
無条件なストロークを与えられると、1子供の情緒が安定する。心が安定し他人へのおもいやりに発展する。2自発性が出来る。これはなんでも肯定されるので、なんでもやってみようという「やる気」につながります。3適応性が出来る。他者との協調ができるようになり、社会性が養われていきます。これが思春期にはそれぞれ、1安定感、2意欲的、3良好な人間関係、として表れて効果的になります。

○4条件付の愛と無視(条件付の愛ストロークとマイナスのストローク)
親の期待や、思惑どおりの行動をとったら「良い子」期待どおりでなければ「だめな子」という○×で子供を評価、比較、品定めは、子供を条件付で愛することになります。よい子を演じた子供は思春期に心身症、不登校等という形で反抗してくる場合が多いようです。「お前なんか」と無視されたり、親に存在を疎んじられたりした子供は非行という形で反抗してきます。

■思春期の子供との接し方
1 気分
明るい気分に変えさせるには
○1心身のリフレッシュ
親自らが心や体にゆとりを持つことが大事です。子供に語りかける前に「深呼吸」を十分にしましょう。適度な運動、カラオケ、趣味、交友関係でリフレッシュして、ゆとりと余裕をもって接すること。また自己催眠、リラクゼイションを常に行い心と体の安定を心がけましょう。柔らかな表情、穏やかな眼差しで語りかけましょう。

○2ものの言い方
「~しなさい」「~するべきだ」の命令、断定を止めて「してくれる?」「できるかな」の依頼、疑問形に変えて尊重して言うようにしましょう。頭ごなしの言い方や、他人の前で子供のプライドを傷つけないこと。感情的、威圧的な言い方は反感を呼ぶだけです。「ちゃん」「君」などの幼児的呼び方をしないで、きちんと名前を呼ぶ。立派に成長している所を認めて語りかけましょう。

○3ほめ育て
出来た事、やったことをまず誉めましょう。条件付ではなくまず努力したことをほめる。次に「偉いね」「よい子だ」とこちらの立場で誉めるのではなく、ひとつひとつ彼らが行なった行動、事実について認め、ほめる。「ここが良かった」「このやり方は素晴らしい」等。また、「ここは良かった。でもここは良くない」というより「ここは良くなかったがここは良かった」とことばの最後に良い印象を残しましょう。

○4笑い
毎日の些細な出来事の中から、楽しかった事、良かった事、嬉しかった、おかしかったことを毎日話し合えるようにしましょう。一緒にテレビを見て大笑いは結構。自分や、夫のドジな事や、まちがいをネタにして笑うのも子供のストレス解消になります。笑い、ウィット、滑稽、ジョーク、エスプリ、ユーモアを振り撒けるようにしましょう。笑いは癌予防にもなります。笑い声、歌声、話し声は家庭円満の証です。

2 考え方
考え方を明るくさせるには
○1よいとこ探し(ピグマリオン効果)
子供の持っている可能性を信じて、肯定的に子供の良い所を探しましょう。「この子には私たちの気が付かなかったすばらしい可能性がある」「私たちはこの子の持っているすばらしい可能性に気が付いた」という態度で認めると、子どもの行動が期待通りになってきます。「嘘から出た誠」「瓢箪からこま」の諺も真実です。

○2リフレーム(再枠づけ)
子供の短所や弱点を、長所として捕らえ、再枠づけを行ないます。例、神経質(デリケート・繊細・こまやか)。臆病(慎重・注意深い)。短気(元気、活発、瞬発力がある)。ぐず(おっとり・のんびり)。まぬけ(人を安心させる・気楽)。のろま(マイペース・あわてない・じたばたしない)等。また母親自身がまず自分の欠点を長所にリフレームすると子供の良いところが見えてきます。

○3肯定的意味づけ
一見悪いと思われる事を肯定的に意味付けします。例。親の嫌なところが子に似る(子供は好きな人に似る・親が反省しやすい親子関係)。病気がちな弱い子(ストレスから自分を守っている子)。失敗した(成功への材料)等である。

○4よいとき探し
朝起きない、かたづけない、言う事を聞かない、勉強しない、ファミコンばかりしている。夜なかなか寝ない等、親の困る時に「どうしたらちゃんとするか」「何故言う事を聞かないのか」と考えるより「良い時はどういう時?」「ちゃんとやる時は?」と考えてみましよう。きっと答えに思い当たるはず。例えば、好きな時、疲れていない時、誉められた時など振り返って上手に子育てが出来た時を思いましょう。

3 行動
積極的な行動をさせる
○1こつこつと根気良く
小さなことでも最後までやりぬかせることが重要です。根気よくほめ、認め、労いましょう。お手伝い、家の役に立つこと、ボランティア等奉仕することを体験させるのは良いことです。人の面倒をみてはじめて親や他人からして貰う事に感謝の気持ちが起こるもの。三日、三週間、三ヵ月をメドにしていきましょう。効果を積み重ねて初めて結果がでます。

○2出来たことを認める
やって当たり前ではその気になりません。こちらの思った通りでなくとも、とりあえず出来たところを認めてあげましょう。何かを成し遂げた達成感のある時に褒めると、意欲的になっていくもの。上手にやる気を伸ばすチャンスになります。但し、期待し過ぎて過分に褒めると逆効果になることがあるので、無理なく自然に褒めること。

4 人間関係
人づきあいを良くさせる
○1わたしもあなたもOKよ
基本的人間関係の四つの構え。
1自他肯定(相手との共通点、一致点、類似点を探し認め合う)2自己肯定他者否定(相手を見下し、優越感で相手を非難する)3自己否定他者肯定(劣等意識、依存的、自信喪失)4他者否定(虚無的、自滅的、破壊的)の中で常に1の構えをとっていくように心がけましょう。

○2劣等感と優越感
人づきあいでは人との優劣を意識し過ぎるとうまくいきません。自分の長所と相手の短所をみて相手を見下し、優越感を感ずると、今度は逆の立場の時に、相手の長所で自分の短所を見下されるのではないかという劣等感にさいなまされるもの。基本的には相手に寛大な気持ちを持ち、互いの長所、短所同志を並べて対等にみるように。

○3人間関係のこつ(1/4方式)
1 子供との相性も1/4は合う。何をやっても許せるし気が楽に付き合える。
2 2/4はまあまあ。。顔見知り、顔馴染み、でそこそこの付き合い。
3 1/4は合いにくい相性がいると考える。無理をしない。他の人に支援を頼む。

○4親の生き方、考え方、行動が手本になります(モデリング)。親もミスをしたり失敗したりしたときには潔く失敗を認め、改善する姿を見せること。また、夫婦の会話、仲の良さを手本に示すつもりでいること。やってはいけないのは両親の互いの悪口や不満を子どもに聞かせること。互いの子育てをしにくくしてしまい、結局自分の子育てのマイナス面として自分に返ってきます。暴力、虐待、悪習慣もマイナスです。

■思春期の問題行動
1 非行とその対策
○1問題行動
喫煙、遅刻、さぼり、授業妨害、喧嘩、暴力などは「攻撃はおびえ」でなんらかの不安、いらいら、不満や、怯えがある可能性があります。自分に注目して欲しい、誰かに受けとめて欲しいという気持ちもあります。機嫌のよい時にゆっくりと、責めずに、おだやかに話しを聞いてみましょう。

○2非行
万引き、たかり、ゆすり、不純異性行為には毅然と対処しましょう。事実を確かめ、学校と連絡をとり、責任をきちんととらせます。その上で親として最後まで子供を信頼していく気持ちをしっかり持ちます。自分でも悪いとわかっていてもやめられなくて、捕まったら却ってほっとしたというケースも多いのです。

○3いじめ
いじめは「相手に対して一方的に身体的、精神的に攻撃を続けて、深刻な苦痛を与えたもの」として文部科学省が定義しています。いじめを放置すると非行に発展し易いといわれます。単なるからかいと捉えず、問題行動として担任と緊密に連絡をとりましょう。父親が先頭に立って学校側や場合によってはいじめる側と交渉することが必要な場合もあります。決して泣き寝入りはしないこと。

 

■思春期の子供の病気とその対策

○1OD(起立性調節障害)
朝起きるとめまいと、急激な血圧低下を起こす。安静時に横になって計った血圧が立つと下がり、脈拍が多くなる。自律神経の調節機能の不調で怠けではありません。女性に多く見られます。内科的治療が必要な場合もあります。うつ病や不登校との鑑別が必要です。

○2拒食症(神経性食欲不振症)
標準体重のマイナス20%のやせの食行動の異常、自己のボディイメージの歪み、無月経、発症年令30才以下等の診断基準で判断します。心理的ケア、家族の愛情も必要です。

○3過敏性大腸症候群
緊張したり、興奮すると下痢をしたり逆に便秘になったりします。交互になることもあります。

○4過換気症候群
精神的興奮から一時的に酸素不足になって呼吸困難になります。女性に多く見られます。不安やしびれが伴うことが多く、心理的ストレスがあります。

○5不登校
初期は頭痛、腹痛症状を訴え、朝はぐずぐずし登校出来ない。下校時間になると外出ができる。やがて、昼夜逆転し、部屋に閉じこもる。うつ病、統合失調症、ODとの識別が必要。対策は家庭の人間関係を調整し、夫婦が連携し、登校刺激を与えないで気持ちを受け入れ見守っていることが大事。時期がきたら、家の中でも生活する能力をつけ自信を与える。

○6統合失調症
この時期に発症することがあります。話す言葉に主語が抜けることが多く前後関係が掴みにくくなります。また聞いたことに少しづつずれていきます。長く閉じこもっていたり、フロに入らなくても平気で、幻聴、幻覚があります。電波がくる、盗聴されている等と話すようになったら要注意です。

○7うつ病
性格が真面目で几帳面な人に多く見られます。話声がゆっくりで低いか、抑揚なく早口で話す、沈んでいる、表情に変化がない、などの時は注意して見守り、早めに専門家に相談しましょう。

 

IV 子供の進路と将来について

○1進学、受験について
本人の希望をまず第一に考え、希望校を選択してまわりが協力しましょう。四年制大学は学校名で選ばず、自分のやりたい内容のある学部を選ぶこと。短大の場合は自分がやりたい仕事に直結する短大の学部や、専門学校を選ぶこと。将来の仕事を見据えて学校を考えましょう。

○2就職
最終的には、自分のやりたい仕事、心から望む方向を考えましょう。たとえそれが険しく困難なものであっても精一杯やってうまくいかなかったら「すがすがしい敗北感」として今後の就職や将来に全力投球できるものです。中途半端な妥協はその後に尾をひいてしまうもの。家庭で十分なしつけが出来ていなくても、就職することによって、社会が子供を育ててくれるということもあります。どんな仕事も大変だということを体で分かってくるものです。

○3フリーター
決まった仕事がなかったり、やむおえずフリーターになることもあるが仕事の意欲を示し行動しているかぎりは、就職と同じように努力をしていると評価しましょう。嫌な仕事に縛り付けられるよりは自由な立場で自分に合った仕事を探すのもひとつの方法です。但し、生活習慣をきちっとすることと、多少収入があれば食費の一部ぐらいは出させることも必要です。

○4ひきこもり
対人恐怖症、強迫神経症、うつ病、統合失調症、等の病気のための療養は医者と相談して支えていきましょう。又、無気力、自立心の欠如、あるいは社会への接触、人との関係をむすぶことの出来ないために家のなかに引きこもってしまう場合は外に出なくても生活するための力を出させるために、掃除、洗濯、炊事等家族の役に立つことを振り分けてさせることは必要です。自分は他人にとって存在価値があるという自覚を持たせるはたらきかけが基本となります。